相続人に認知症があるとき、家族は相続手続きをどう進める?
夫婦の一方が亡くなり、家や預金の相続手続きを進めたい。
ところが、相続人となる配偶者には認知症があり、遺産の分け方をどこまで理解できているのか分からない。
「家族が代わりに書類を書けばよいのでしょうか」と迷うことがあります。
認知症という診断名だけで、相続手続きができないと決まるわけではありません。
一方で、ご本人が遺産分割の内容を理解し、自分で判断することが難しい状態であれば、家族だからという理由だけで代わりに内容を決めたり、署名したりすることはできません。
まずは、ご本人の状態と、これから行おうとしている手続きを整理するところから始めます。
まずは、ご本人が話し合いの内容を理解できるか
遺産分割では、「どの財産を誰が相続するのか」を相続人同士で決めます。
そのため、ご本人が遺産分割の内容を理解し、自分の意思で判断できるかが大切になります。
ここで、「認知症と診断されているからできない」「普通に会話ができるから大丈夫」「自分の名前を書けるから問題ない」と、一つの事情だけで決めるものではありません。
ご本人に分かりやすく説明しながら、どのような財産があり、どのように分けようとしているのかを理解して判断できる状態かを見ていきます。
また、遺言書が残されているか、すでに成年後見制度などを利用しているかによっても進め方は変わります。
まずは遺言書の有無、相続人、家や預金などの財産を確認し、そのうえで遺産分割が必要なのかを整理します。
家族というだけで、ご本人の代わりに決めることはできません
ご本人が遺産分割を自分で判断することが難しく、代わりに手続きを行う人が必要な場合には、成年後見制度などの利用を検討することがあります。
成年後見制度は、認知症などにより一人で法律上の判断をすることが難しい方を支援する制度です。ご本人の状態に応じて、後見・保佐・補助といった仕組みがあります。
「認知症なら必ず成年後見人を付ける」ということではありません。どの程度の支援や代理権が必要なのかを、ご本人の状態と手続きの内容から考えます。
また、すでに成年後見人などが付いている場合でも注意が必要です。
たとえば、ご本人の成年後見人を務めているお子さん自身も、亡くなった方の相続人である場合があります。
この状態で遺産分割をすると、成年後見人自身の取り分と、ご本人の取り分が関係するため、法律上の利害がぶつかることがあります。
このような場合には、後見人とは別にご本人を代理する人を家庭裁判所で選ぶ手続きなどが必要になることがあります。
相続だけでなく、その後の暮らしも一緒に考えます
たとえば、亡くなった方の名義の自宅と預金があり、残された配偶者がその自宅でこれからも暮らす予定だとします。
この場合、「家を誰の名義にするか」だけを先に決めるのではなく、ご本人のこれからの生活も一緒に考えます。
自宅のほかにどのくらい預金があるのか、今後の生活費や介護費にどの程度のお金が必要なのか、ご家族はどのような分け方を考えているのかを確認していきます。
成年後見制度を利用する場合には、遺産分割のためだけの一時的な手続きだと思わないことも大切です。
2026年10月18日現在の法定後見制度では、遺産分割など申立てのきっかけになった手続きが終わっても、それだけで後見が終了するわけではありません。家庭裁判所への定期的な報告など、その後もご本人の財産管理や生活を支える役割が続きます。
そのため、「相続を進めたいから、とりあえず後見を申し立てる」と考えるのではなく、ご本人の今後の暮らしも含めて制度を利用する意味を考える必要があります。
相続手続きをまとめて整理したい方は、遺産承継を司法書士に頼むと、どこまで任せられる?も参考にしてください。
協議書を書く前の段階から、ご相談いただけます
まだ遺産分割協議書を作っていなくても構いません。
まずお聞きするのは、たとえば次のようなことです。
- どなたが亡くなったのか
- 相続人は誰か
- 遺言書があるか
- ご本人が現在どのような様子か
- すでに成年後見などの支援を利用しているか
- 分かる範囲で、家や預金など何が残されているか
最初から戸籍や診断書などをすべてそろえておく必要はありません。
司法書士へ相談した場合には、戸籍や不動産の登記記録を確認し、必要に応じて家庭裁判所へ提出する書類の作成を支援し、その後の相続登記まで進めることができます。
家庭裁判所への申立てそのものをご家族で行う方法もあります。
一方で、司法書士がご本人の診断をしたり、家庭裁判所の判断を決めたり、相続人同士の争いを代理して交渉したりするものではありません。争いがある場合には、弁護士への相談が必要になることがあります。
司法書士くぼた事務所では、杉並区阿佐谷南で相続登記や家庭裁判所へ提出する書類の作成についてご相談を受けています。
ご本人の様子と、今どの手続きで迷っているのか。まだ整理できていない段階からお聞かせください。
※本記事は2026年10月18日時点の裁判所・厚生労働省等の公表情報を確認して作成しています。
【主な確認資料】
裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」
裁判所「後見開始」
裁判所「成年被後見人(被保佐人、被補助人)に関する特別代理人(臨時保佐人・臨時補助人)の選任」
厚生労働省「成年後見はやわかり」
2026年10月19日
