家業や財産を「この人に継がせたい」。遺言書と養子縁組で想いを形にする方法を司法書士が解説
先日、映画「国宝」を観ました。アマゾンプライムで無料配信されているということで、深夜についつい最後まで観てしまいました。
歌舞伎の世界を舞台に、血のつながりのない者が名門の名跡を継ぐ。実子はその事実に葛藤を抱え、継いだ本人もまた、自分が何者であるかという問いと向き合い続ける。圧倒的な美しさの裏にある、人間の業と誇りと哀しさ。重厚な物語でした。
観終わってしばらく余韻に浸りながら、ふと思ったのです。「財産や家業を、誰に、どうやって継がせるか」という問いは、歌舞伎の名跡だけの話ではないな、と。
「この人に継がせたい」が叶わないことがある
日本の相続は、法律で相続人と相続分がおおむね決まっています。配偶者・子ども・親・兄弟姉妹——この順番と割合が、遺言書がなければ基本的なルールになります。
でも、現実の家族はそう単純ではありません。
長年一緒に働いてきた弟子やお弟子さんに事業を継がせたい。世話になった甥や姪に財産を残したい。内縁の妻に住む家を残したい。実子より、むしろこの子に——という想いが、法律のルールと必ずしも一致するわけではありません。
「国宝」の物語が心に刺さるのは、そこに普遍的な人間の葛藤があるからだと思います。誰に継がせるかは、財産の問題である前に、人の問題なのです。(実際の物語の中で語られる部分はとても複雑で、さまざまな苦悩や途方もない葛藤があります)
遺言書で「想い」を形にする
血のつながりのない人に財産を残したい場合、遺言書が最も基本的な手段です。遺言書があれば、法定相続人以外の人にも財産を遺すことができます。
ただし、ひとつ知っておいてほしいことがあります。遺留分という制度です。
法定相続人には、遺言書の内容にかかわらず「最低限これだけはもらえる」という権利が法律で保障されています。たとえば全財産を特定の誰かに遺すと書いても、他の相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。
「国宝」の中でも、実子が抱える葛藤は深いものでした。法律の世界でいえば、遺留分はその葛藤に一定の答えを出す仕組みでもあります。想いを形にするためには、こうした制度も含めて全体を設計する必要があります。
養子縁組という選択肢
もう一歩踏み込んで、「この人を正式に家族にしたい」という場合は養子縁組という方法もあります。
養子縁組をすると、養子は実子と同じ法定相続人になります。歌舞伎の世界で名跡を継ぐ際に養子縁組が行われることが多いのも、まさにこのためです。法的に「家族」にすることで、財産の承継を確かなものにする。
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。成人した弟子や甥・姪を養子にする場合は普通養子縁組が使われます。この場合、養子は実の親との親子関係も残ったまま、養親との親子関係も生まれます。つまり、相続の観点では両方の家の相続人になります。
家業を特定の子どもに継がせたい場合
「子どもが複数いるが、家業は長男に継がせたい」というケースも、相続では悩みどころです。
事業用の不動産や自社株を特定の子どもに集中させようとすると、他の子どもの遺留分と衝突することがあります。「家業を継ぐ子が会社を、他の子は預金を」という形で財産全体のバランスを取ることが基本ですが、財産の構成によってはうまくいかない場合もあります。
こうした場合、遺言書に加えて生前贈与や家族信託を組み合わせることで、より柔軟に承継の仕組みを作ることができます。
「誰に継がせるか」は、早めに考えるほどいい
映画の中で、人間国宝に至る主人公の人生は壮絶でした。美しさの裏に、言葉にならない孤独と覚悟がありました。
財産や家業の承継も、考え始めるのが早いほど選択肢が広がります。認知症になってからでは遺言書も養子縁組もできなくなります。元気なうちに「この人に継がせたい」という想いを、きちんと法的な形にしておくことが大切です。
難しい話に聞こえるかもしれませんが、まず「こういうことを考えているんですが」と話してみてください。一緒に整理していきます。杉並区・荻窪・阿佐ヶ谷・高円寺・中野区・武蔵野市周辺の方、お気軽にどうぞ。
司法書士くぼた事務所(東京都杉並区)
遺言書作成・養子縁組・家業承継・相続登記・家族信託を専門とする司法書士事務所です。荻窪・阿佐ヶ谷・鷺ノ宮・下井草・西荻窪・高円寺・石神井公園・中野区・練馬区・武蔵野市エリアの方からもご相談いただいています。
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2026年6月16日
