黄金株とは何か?少ない株式数でも拒否権を持てる仕組みを司法書士が解説
前回、日本製鉄のUSスチール買収のニュースをきっかけに、「会社を買うとは株式を取得することだ」というお話をしました。今回はその続きで、株式の話をするうえで欠かせない「黄金株」という仕組みについて解説します。
名前だけ聞くと特別な響きがありますが、実は中小企業の事業承継でも応用できる、実用的な考え方です。
黄金株とは何か
黄金株とは、会社の重要な決定事項について拒否権を持つ特別な株式のことです。正式には「拒否権付き株式」と呼ばれます。
普通の株式は、持っている株数が多いほど議決権も大きくなります。100株持っている人は、1株しか持っていない人より10倍の影響力を持ちます。
ところが黄金株は違います。たとえ1株しか持っていなくても、あらかじめ会社の定款で定めた特定の事項——たとえば「会社の解散」「事業の売却」「重要な役員の選任」など——について、株主総会や取締役会の決議に対して「拒否権」を発動できます。つまり、その1株があるだけで、決定を止める力を持つということです。
なぜ「黄金」と呼ばれるのか
もともとはイギリスで、国営企業を民営化する際に、政府が会社に対する一定の影響力を残すために使われた仕組みです。1株だけ持っているのに、まるで黄金のように特別な価値を持つ——というイメージから、この呼び方が定着しました。
日本でも会社法上「拒否権付き株式」として制度化されており、株式会社であれば中小企業でも導入することができます。
事業承継でどう使えるのか
ここからが、今日いちばんお伝えしたいところです。
事業承継では、よくこんな悩みが出てきます。
「後継者の息子に会社を任せたいけれど、本当にうまくやっていけるか、まだ少し不安がある」「経営権は譲りたいが、会社を勝手に売却されたり解散されたりするのは困る」
こうした場合に、黄金株が一つの解決策になります。
具体的には、後継者には普通株式の大部分を譲って、経営の実権と日々の判断はしっかり任せます。一方で、先代の経営者は黄金株を1株だけ手元に残しておきます。これにより、後継者は通常の経営判断を自由に行えますが、会社の根幹を揺るがすような重大な決定(解散、事業譲渡、定款の重要な変更など)については、先代の同意がなければ実行できない、という仕組みを作れます。
いわば、経営のハンドルは譲りつつ、最終的な安全装置だけは残しておく、というイメージです。
導入する際の注意点
拒否権の範囲を明確にしておく
「何に対して拒否権を持つのか」を定款にきちんと定めておく必要があります。範囲があいまいだと、後継者との間で「これは拒否権の対象なのか」というトラブルになりかねません。
誰が持つかを慎重に考える
先代が引退後も持ち続けるのか、信頼できる第三者(顧問など)に持たせるのか。先代が亡くなった場合、その黄金株は相続の対象になるため、誰に引き継がれるかも事前に考えておく必要があります。
後継者との信頼関係も大切
拒否権をちらつかせすぎると、後継者が「信頼されていない」と感じてしまうこともあります。あくまで「最後の安全装置」として、普段は経営に任せる姿勢が大切です。
導入の手続き
黄金株を発行するには、会社の定款を変更して、拒否権付き株式の内容を定める必要があります。定款変更には株主総会の特別決議(出席株主の3分の2以上の賛成)が必要で、その後、法務局への登記手続きも行います。
この一連の手続きは司法書士が対応する分野です。「どんな事項を拒否権の対象にすべきか」という設計の部分は、税理士や弁護士とも相談しながら、会社の実情に合わせて決めていくことになります。
まとめ
黄金株は、もともと国レベルの大きな話で使われた仕組みですが、考え方自体は中小企業の事業承継にもそのまま活かせます。「経営権は譲りたいが、最後の安全装置は残したい」という経営者の方にとって、検討する価値のある選択肢の一つです。
「事業承継をどう進めればいいか」「株式の仕組みを使った対策を知りたい」——そうしたご相談は、杉並区・荻窪・阿佐ヶ谷・高円寺・中野区・武蔵野市周辺の経営者の方からもいただいています。お気軽にご相談ください。
司法書士くぼた事務所(東京都杉並区)
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2026年6月22日
