船も登記されるって知ってましたか?司法書士が扱う船舶登記の話
前回、政党にも登記があるという話を書きました。今日はその続きで、もう一つ意外な登記の話をご紹介します。
実は、船も登記されます。それも、不動産とよく似た仕組みで。
船は「動く不動産」
船は本来、法律上は動産(動かせる財産)に分類されます。ですが、総トン数20トン以上の船舶については、不動産と同様に扱われ、法務局での登記が必要になります。
理由は、船の経済的価値の大きさです。大型船舶は一隻で数十億円という価値を持つこともあり、売買や担保設定において、誰が所有者なのかを公に示す仕組みが必要になります。そのため、土地や建物と同じように、登記によって権利関係を明らかにする制度が設けられているのです。「動く不動産」と呼ばれることもあります。
「登記」と「登録」は別の手続き
ここが少しわかりにくいポイントなのですが、船舶に関する手続きには、よく似た名前の二つの制度があります。
| 手続き | どこで | 誰が扱えるか |
|---|---|---|
| 船舶登記 | 法務局 | 司法書士・海事代理士 |
| 船舶登録 | 運輸局 | 海事代理士(独占) |
船舶を航行に使うには、運輸局で「登録」を行い、船舶国籍証書の交付を受ける必要があります。そしてその前提として、法務局で所有権保存の「登記」を受けなければなりません。
このうち、「登記」の部分は司法書士も扱うことができます。むしろ実務上は、司法書士への依頼が多いとも言われています。一方で、運輸局での「登録」手続きは海事代理士の独占業務のため、司法書士は扱えません。
船舶特有の、面白い登記
製造中の船に抵当権を設定できる
まだ完成していない、建造中の船舶に対して抵当権を設定する登記が認められています。建造には長い期間と莫大な費用がかかるため、造船の資金を調達する手段として、この仕組みが用意されているのです。
以前、モンゴルの羊と日本のマグロの話で「育てている途中のもの」を担保にする集合動産譲渡担保をご紹介しましたが、船の場合は「造っている途中のもの」に抵当権を設定できる、という発想です。
船舶管理人という制度
船舶を複数人で共有する場合、船舶管理人を選任して登記しなければなりません。原則として共有者の中から選ばれますが、共有者全員の同意があれば、共有者以外の人を選任することもできます。
不動産の共有では、こうした管理人を必ず立てる決まりはありません。船は実際に航行させる必要があるため、日々の運航に関する判断を誰かが担わなければならない——という実務上の要請から生まれた制度なのだと思います。
登記の考え方は、どの分野でも共通
船舶登記も、不動産登記や商業登記と、根っこの考え方は同じです。誰が所有者なのか、どんな担保が付いているのかを、公に示して第三者に主張できる形にする。これが登記制度の本質です。
対象が土地であれ、建物であれ、会社であれ、船であれ、この構造は変わりません。相続登記も、この同じ考え方の上に成り立っています。
まとめ
船も登記される、という少し意外な話をご紹介しました。しかも、司法書士が扱える業務範囲に含まれています。前回の政党登記に続き、登記制度の幅広さを感じていただけたら嬉しいです。
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2026年7月31日
