入院中のご家族が「遺言を残したい」と言ったら。何から始めればいい?
入院中のお母さまから、「家のことを、きちんと決めておきたい」と言われた。
遺言を残したい気持ちは分かるけれど、本人は外出できない。何を準備して、どこへ連絡すればよいのでしょうか。
入院中だからといって、遺言を作れないと決まっているわけではありません。たとえば公正証書遺言であれば、事情に応じて公証人に病院へ来てもらって作成する方法があります。
まず大切なのは、家族が遺言の文章を完成させることではありません。ご本人が誰に何を残したいと考えているのかを聞き、その希望を形にするための準備を始めることです。
病院で遺言を作る方法もあります
公正証書遺言は、公証人がご本人の意思を確認しながら作成する遺言です。
通常は公証役場で作成しますが、病気や体力の低下などにより公証役場へ出向くことが難しいときには、公証人が病院や自宅、施設などへ出張して作成する方法があります。
そのため、「入院しているから遺言はもう作れない」と考える必要はありません。
ただし、どの公証人に依頼するか、病院への出張が可能か、いつ作成できるかなどは、公証役場と相談しながら決めていきます。
公正証書遺言では、ご本人自身の意思が何より大切です。家族が代わりに「この内容でお願いします」と遺言をすることはできません。
一方で、家族が準備を手伝うことはできます。資料をそろえたり、ご本人が希望している内容を整理したり、必要な連絡を手伝ったりすることは可能です。
家族が最初から遺言の文章を考えなくても大丈夫です
「遺言を作るなら、まず完成した文章を用意しなければ」と思うかもしれません。
ですが、最初の段階ではそこまで必要ありません。
まず聞きたいのは、たとえば次のようなことです。
- ご本人は、誰に何を残したいと思っているか
- 自宅や預貯金など、どのような財産があるか
- 現在の入院先や、面会・外出ができる状況か
財産の一覧が完成していなくても構いません。
「自宅は長女に残したい」「預金は子どもたちに分けたい」「まだ誰にどこまで残すか迷っている」といった段階でも、そこから話を整理できます。
大切なのは、ご家族が望む内容を遺言にすることではなく、ご本人がどうしたいと思っているかを中心に考えることです。
遺言には自筆証書遺言や公正証書遺言などがありますが、方式ごとの違いを最初からすべて覚える必要はありません。今回のように外出が難しい状況では、ご本人の希望や体調を踏まえて、どの方法で進めるかを考えていきます。
希望を聞いたら、作成の日を迎える準備を進める
たとえば、ご本人は「自宅は長女に残したい」と考えているけれど、不動産の資料がすぐには見つからず、ご家族も平日に役所などへ動く時間が取りにくい、ということもあります。
このような場合は、ご本人の希望を確認しながら、必要な資料を集め、公正証書遺言にするための内容を整えていきます。
司法書士へ作成支援を依頼する場合には、家族関係や財産を確認し、遺言の内容を整理したうえで、公正証書遺言を作るための準備を進めます。
その後、公証人がご本人の意思を確認し、公正証書遺言を作成します。
つまり、司法書士やご家族がご本人に代わって遺言をするわけではありません。
また、公正証書遺言の作成には証人2名が必要です。推定相続人など証人になれない方もいるため、「家族なら誰でも証人になれる」とは限りません。
病院で作成する場合には、面会できる時間やご本人の体調、公証人が訪問できる日などを見ながら予定を合わせていきます。
入院しているという理由だけで急がせる必要はありませんが、遺言はご本人自身の意思に基づいて行うものです。作りたいという希望があるなら、体調を見ながら準備を始めておくと進めやすくなります。
どこまで頼みたいか決まっていなくても始められます
公正証書遺言の準備は、公証役場や司法書士などに相談しながら進めることができます。
ご本人の希望はあるものの、どのように文章にすればよいか分からない、家族関係や財産の資料をそろえる時間が取りにくい、公正証書遺言を作るための準備を一緒に進めたい、といった場合には、司法書士へ作成支援を依頼する方法があります。
専門家へ依頼する理由は、「難しいから」だけではありません。
ご本人の希望を聞きながら、ご家族が仕事や通院の付き添いを続ける中で、資料集めや文案準備まで抱える負担を減らすという考え方もあります。
司法書士くぼた事務所では、杉並区阿佐谷南で遺言書の作成支援を取り扱っています。
まだ何を頼むか決まっていなくても、「入院中の家族が遺言を残したいと言っている」というところからお話しいただけます。
※本記事は2026年10月9日時点の日本公証人連合会等の公表情報を確認して作成しています。実際の作成方法は、ご本人の希望、体調、財産内容、公証人との調整などによって異なります。
【主な確認資料】
日本公証人連合会「遺言」
日本公証人連合会「公正証書は、本人でなければ作成できないのでしょうか?」
日本公証人連合会「公正証書遺言の証人は、どのように手配するのですか?」
2026年10月9日
