司法書士くぼた事務所

お電話でお問い合わせ

 03-4500-5909

不動産×相続

相続した実家を兄弟の一人が取得するには?代償分割の仕組みと注意点

親の実家を兄弟姉妹で相続し、そのうち一人が住み続けたい場合には、「代償分割(だいしょうぶんかつ)」が選択肢になります。一人が実家を取得し、その代わりに他の相続人へ金銭などを渡して、取得する財産を調整する方法です。

実家を売らずに残せますが、家の価額と支払える金額が合わなければ、話合いは進めにくくなります。まず、不動産の評価、代償金の資金、相続人全員の意向を整理しましょう。

代償分割とは?兄弟2人の例で考える

例えば、相続人は成人の兄弟2人、遺産は実家だけで、借金や遺言はなく、実家の価額を3,000万円、取得分を半分ずつとすることで合意したとします。

兄が実家を取得し、自分の資金から弟へ1,500万円を支払うのが代償分割の一例です。兄は家を所有して住み続けられ、弟は金銭を受け取ります。

これは仕組みを示す架空の例です。実際には、預貯金など他の遺産、生前贈与、遺言の内容なども確認します。代償金が必ず「家の価額÷兄弟の人数」になるわけではありません。

実家を売却し、売却代金を分ける方法は「換価分割」です。売却も含めて比較したい場合は、換価分割の流れと注意点をご覧ください。

代償分割が向いているケース

  • 実家に住み続けたい相続人がいる
  • 店舗や工場など、事業用不動産を分けずに引き継ぎたい
  • 遺産分割の段階で、一人の所有にして共有名義を避けたい

いずれも、取得する人が代償金を用意でき、他の相続人も金額や支払条件に納得できることが大切です。住み続けたいという希望だけで、代償分割を一方的に決めることはできません。

今回扱うのは、遺産分割で誰が実家を取得するかを決める場面です。既に共有名義となった不動産の持分買取りなどは、共有名義の不動産の解消方法で説明しています。

話合いの前に確認したい4つのこと

  1. 実家の範囲と価額:登記事項証明書や課税明細書などで土地・建物を確認し、価格を判断する資料を集めます。
  2. 住宅ローン・抵当権:ローン残高、団体信用生命保険の適用、登記上の抵当権が残っているかを確認します。相続人同士で返済担当を決めても、それだけで金融機関に対する他の相続人の返済義務がなくなるとは限りません。金融機関にも確認が必要です。
  3. 代償金の資金:手元資金や借入れの可否を確認します。借入れを予定する場合、融資が受けられる前提だけで支払を約束しないことが大切です。
  4. 相続人全員の合意:戸籍で相続人を確認し、遺言の有無・内容を確かめたうえで、協議に参加する人と決める内容を整理します。

相続人に未成年者がいるなど、通常の話合いだけでは進められない場合もあります。事情があるときは、協議書を作る前に確認しましょう。

実家の評価額は、どの数字を使えばよい?

不動産には、固定資産税評価額、相続税評価額、実際の売買で見込まれる実勢価格など、目的の異なる価額があります。

  • 固定資産税評価額:固定資産税などの計算に用いる評価額
  • 相続税評価額:相続税を計算するための評価額
  • 実勢価格:市場で実際に取引される価格の目安。査定や近隣の取引事例などを参考にします

代償金を話合いで決める際に、必ず固定資産税評価額を使うという決まりはありません。どの資料を基準に、いつの時点の価額で考えるかをそろえ、全員で納得できる金額を検討します。見方が分かれる場合には、不動産会社の査定や不動産鑑定士の評価を参考にする方法もあります。

なお、遺産分割のために合意した価額と、相続税の申告で使う価額は同じとは限りません。協議の金額をそのまま税務申告に使えるとは考えず、必要に応じて税理士へ確認しましょう。

協議書には取得する不動産と支払条件を明記する

代償分割の合意は、遺産分割協議書に具体的に記載します。「兄が家を取得し、弟へ後でお金を払う」だけでは、金額や期限について認識が食い違うおそれがあります。

  • 誰が、どの土地・建物を取得するのか
  • その取得の代償として、誰が誰にいくら支払うのか
  • いつまでに、どの方法で支払うのか
  • 分割払いなら、各回の金額と支払期日をどうするのか

登記と支払の時期も合わせて整理します。分割払いには将来支払われないリスクがあるため、資金の見通しや支払を確保する方法を含めて確認が必要です。協議書に書くだけで、必ず支払われるわけではありません。

不動産の表示は登記記録に合わせます。基本事項は、遺産分割協議書の書き方も参考にしてください。

代償金の支払い方によっては税務の確認が必要

代償分割では、相続税の計算上、財産を取得して代償金を支払う人と、受け取る人の双方について確認が必要です。実勢価格を基に決めた代償金を、相続税の計算でもそのまま差し引くとは限りません。

また、現金の代わりに、実家を取得する相続人が以前から持っていた別の不動産を渡す場合には、その人の譲渡所得の課税も問題になります。

金額、評価の基準、現金以外の財産を使うかなどで取扱いが変わるため、「代償金には税金がかからない」と一律には判断できません。税額や申告の要否は、合意・支払の前に税理士へ確認し、必要に応じて登記手続と連携して進めます。

参考:国税庁「代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」

合意後は、実家を取得する人への相続登記を進める

話合いがまとまったら、その内容に沿って実家を取得する相続人の名義へ変更する相続登記を進めます。一般的には、次の順で準備します。

  1. 相続人・不動産と、遺産分割の内容を確認する
  2. 遺産分割協議書、戸籍、印鑑証明書など必要な書類をそろえる
  3. 不動産を管轄する法務局へ相続登記を申請する
  4. 登記の完了を確認し、代償金は合意した期日・方法で支払う

支払が必ず登記後になるわけではありません。登記と支払をどう組み合わせるかは、協議内容や資金調達に応じて事前に整理します。ローンや抵当権の手続も、相続登記だけで完了するとは限りません。

期限や必要書類、費用の全体像は、杉並区で相続登記をするには?をご覧ください。

実家を残すために、相談で整理できること

ご家族で、住み続けたい人の希望、財産の一覧、用意できる資金を整理することから始められます。全員が合意し、ご自身で書類を準備して相続登記を申請することも可能です。

一方で、代償金の支払条件と登記の進め方を合わせて確認したい場合や、協議書の記載に不安がある場合は、司法書士への相談が役立ちます。司法書士くぼた事務所では、相続登記と、それに必要な遺産分割協議書の作成についてご相談いただけます。

相続人間で分け方や金額に争いがある場合、相手との交渉や紛争対応は弁護士へご相談ください。個別の税務判断は税理士が担当します。

阿佐ヶ谷・南阿佐ヶ谷・杉並区周辺で、実家を一人が取得する相続登記をご検討の方は、取扱サービス・費用をご確認のうえ、初回無料相談・お問い合わせからご相談ください。手元にある不動産の資料と、ご家族の希望を整理したメモからでも構いません。

2026年9月24日

« »